【リリース短信 -6- 】   新しい泉質名「水素泉」の実現に向けて

当研究所では5月28日、このたび新しく設立された「分子状水素医学生物学会」の設立記念大会において、「天然の水素温泉について」を口頭発表しました。これは、かねて論文発表した白馬八方温泉の事例を中心に、その後、明らかにした情報を付加して行ったものです。

白馬八方温泉では、高濃度の溶存水素を含む約50℃の湯が日量1,000t以上も湧出しています。これほどの温泉は世界でも例はなく、今後、新たに溶存水素を含む温泉が発見されたとしても、白馬八方温泉に比肩する規模、レベルの温泉はそうそう出てこないと思われます。

ところで、温泉には10種類の泉質区分がありますが、その根拠となる成分には水素(ここでいう水素とは、分子状水素:Hを指します)は含まれておらず、これまでノーマークとされてきました。温泉に泉質名が付くということは、同時に適応症の掲示が認められた「療養泉」の資格を有することを意味します。この適応症と成分との関係については、2014年の鉱泉分析法指針の改訂にともなって若干、整理された部分(たとえば、妊婦の入浴の禁忌が削除となったことなど)はありますが、依然として、医学的、科学的根拠が曖昧である感は否めません。成分よりも、温熱や転地効果に依存している側面が強いとも言えます。その中で水素は療養泉の根拠となる成分として、これまで明瞭な効果が確認されてきた「硫黄泉」や「炭酸泉」をも凌駕し得る、高いポテンシャルを秘めています。

一方、水素の研究はまだ途上にあります。未明な事も多く残されていますが、医学的な効果を報告する原著論文はすでに世界で300報を超えており、着実に成果を上げつつあります。水素による療養効果が重畳的に明らかになるにつれ、11種類目の新たな泉質名として「水素泉」の実現への期待もいっそう高まります。

温泉そのもので病気を治すことはできませんが、疾病予防や病後回復に効果が期待されていることは周知のとおりです。平成26 年度の医療費は40 兆円。この5年で3兆4000億円増であり、医療費削減は急務です。そこに温泉が関与することで、医療費削減の一助となることが期待されています。

溶存成分に水素が関与するのはごく限られた温泉での話にはなりますが、水素は人工でも代替可能(たとえば、今はやりの人工炭酸泉のように)です。よって「水素泉」に認定される温泉は極めて少数であったとしても、その実現は、波及効果を考えれば大きなインパクトをもたらすはずです。当研究所でも「水素泉」の実現に向けて、今後も様々な取り組みを進めていきたいと考えています。