2月15日付で新たに以下の4施設が「還元系温泉認定施設」に認定されました。
・みるき~すぱサンビレッジ (大分県・天ケ瀬温泉)
・ホテル成天閣 (大分県・天ケ瀬温泉)
・福屋旅館 (大分県・天ケ瀬温泉)
・神田湯 (大分県・天ケ瀬温泉)
2月15日付で新たに以下の4施設が「還元系温泉認定施設」に認定されました。
・みるき~すぱサンビレッジ (大分県・天ケ瀬温泉)
・ホテル成天閣 (大分県・天ケ瀬温泉)
・福屋旅館 (大分県・天ケ瀬温泉)
・神田湯 (大分県・天ケ瀬温泉)
当研究所では5月28日、このたび新しく設立された「分子状水素医学生物学会」の設立記念大会において、「天然の水素温泉について」を口頭発表しました。これは、かねて論文発表した白馬八方温泉の事例を中心に、その後、明らかにした情報を付加して行ったものです。
白馬八方温泉では、高濃度の溶存水素を含む約50℃の湯が日量1,000t以上も湧出しています。これほどの温泉は世界でも例はなく、今後、新たに溶存水素を含む温泉が発見されたとしても、白馬八方温泉に比肩する規模、レベルの温泉はそうそう出てこないと思われます。
ところで、温泉には10種類の泉質区分がありますが、その根拠となる成分には水素(ここでいう水素とは、分子状水素:H2を指します)は含まれておらず、これまでノーマークとされてきました。温泉に泉質名が付くということは、同時に適応症の掲示が認められた「療養泉」の資格を有することを意味します。この適応症と成分との関係については、2014年の鉱泉分析法指針の改訂にともなって若干、整理された部分(たとえば、妊婦の入浴の禁忌が削除となったことなど)はありますが、依然として、医学的、科学的根拠が曖昧である感は否めません。成分よりも、温熱や転地効果に依存している側面が強いとも言えます。その中で水素は療養泉の根拠となる成分として、これまで明瞭な効果が確認されてきた「硫黄泉」や「炭酸泉」をも凌駕し得る、高いポテンシャルを秘めています。
一方、水素の研究はまだ途上にあります。未明な事も多く残されていますが、医学的な効果を報告する原著論文はすでに世界で300報を超えており、着実に成果を上げつつあります。水素による療養効果が重畳的に明らかになるにつれ、11種類目の新たな泉質名として「水素泉」の実現への期待もいっそう高まります。
温泉そのもので病気を治すことはできませんが、疾病予防や病後回復に効果が期待されていることは周知のとおりです。平成26 年度の医療費は40 兆円。この5年で3兆4000億円増であり、医療費削減は急務です。そこに温泉が関与することで、医療費削減の一助となることが期待されています。
溶存成分に水素が関与するのはごく限られた温泉での話にはなりますが、水素は人工でも代替可能(たとえば、今はやりの人工炭酸泉のように)です。よって「水素泉」に認定される温泉は極めて少数であったとしても、その実現は、波及効果を考えれば大きなインパクトをもたらすはずです。当研究所でも「水素泉」の実現に向けて、今後も様々な取り組みを進めていきたいと考えています。
2016年4月2日、「日本の温泉データ」を最新の2014年度版に更新しました。
今回の留意点は以下の通りです。
【温泉地数について】
昨年3月末に環境省自然環境局が発表した温泉地数は3,159カ所で、対前年で74カ所増でした。これについては、昨年の本欄で不自然な違いがあると指摘(こちら)しましたが、その後、修正が行われたようで、現在公表されているデータでは、3,098カ所、対前年13カ所増となっています。つまり、指摘した山梨県の61カ所増の取り消しが行われたようです。その更新時期は不明ですが、環境省ホームページの閲覧時期によって温泉地数の認識が異なることになりますので、注意が必要です。なお、現在最新の2014年度版では修正後のデータに基づいており、不自然な違いは見られません。
【年間延べ宿泊利用人員】
大きな違いが見られたのは三重県で、対前年で1,474,411人減となっています。
以上、2014年度版における留意点となります。
2015年4月30日、「日本の温泉データ2013」を公開しました。以下、数値上、特異性が見られた事項について、留意点としてお知らせいたします。
【温泉地数について】
今回、対前年で温泉地は74カ所増えています。特異な数値としては、山梨県の61カ所増(2012年度:28カ所→2013年度:89カ所)が挙げられます。環境省の定義では「宿泊施設がある場所」となっているため、1軒宿も温泉地にカウントされます。ところが、宿泊施設数では2012年度:256施設から2013年度:232施設に減っています。これではどうも計算が合いそうになく、不自然です。そこで山梨県の温泉を管轄する森林環境部大気水質保全課に問い合わせをいたしましたが、「理由はわからない」という回答でした。
このほか、宮城県でも36カ所増となっていますが、宿泊施設数は前年度とほぼ同じです。
このように、温泉地数の変動については毎年、どこかの県で不自然な変動があるので注意を要します。参考:2012年度版の温泉地数について
【泉源数】
秋田県:100カ所増 (2012年度:512カ所→2013年度:612カ所)
【対前年で温泉利用がもっとも変化が見られた地域】
京都府の温泉利用で大きな変化が見られました。
・温泉地数:対前年で-1カ所(2012年度:40カ所→2013年度:39カ所)
・利用泉源数:47カ所増 (2012年度:46カ所→2013年度:93カ所)
・温泉施設:42カ所*増 (2012年度:197カ所→2013年度:239カ所)
*このうち、日帰り施設は24カ所
・ゆう出量:毎分5,340リットル増 (2012年度:11,666リットル→2013年度:17,006リットル)
・延べ宿泊利用人員:854,035人増(2012年度:364,380人→2013年度:1,218,415人)
以上、2013年度版における留意点となります。
簡易式溶存水素計(ENH-1000等)で温泉水を測定し、「溶存水素がある」と誤認する事例 (山中温泉、俵山温泉ほか) が増えています。
簡易式溶存水素計は、溶存している水素 (H2のことです。温泉分析書に記載のあるH+のことではありません。誤解している方が非常に多いので敢えて付言しておきます) を直接、選択的に測定するのではなく、酸化還元電位計を応用した簡易的な測定器です。
仕組みとしては、対象となる液体の酸化還元電位を測り、内蔵している検量線データに基づいて、溶存水素量を推定して算出するものです。
しかし、判断基準が酸化還元電位のみであるため、水素以外にも還元性の物質が混じっている液体や、基本的に還元性である温泉(塩素消毒された湯は除く)では、測定した酸化還元電位をすべて溶存水素量に換算してしまうので、溶存水素がなくても「あり」となってしまいます。また、pHの違いは一切考慮されませんので、酸化還元電位の特性によりpHの高いアルカリ性の水素水では溶存水素量が実際より多く表示されますし、逆に酸性になると溶存水素があっても「なし」と表示されます。
つまり、この測定器は純粋な、pH7前後の「水素水」のみを対象としていて、それ以外の液体を測るということは想定していないのです。よって、酸化還元電位の観点を踏まえれば、pH7前後の純粋な水素水であればある程度、参考程度の値を得ることができると考えられますが、それ以外の用途(たとえ水素水でもpH7前後以外では)では役に立たないのです。
さらに付言すれば、酸化還元電位計の電極は管理や使用の状態により、正しい値を示さなくなることが多々あります。酸化還元電位計であれば、知識と経験のある方であればそのことを熟知しているので回避が可能ですが、簡易式溶存水素計ではその確認が困難です。よって、もともと推定値で示される値に、さらに不確かさの要因が加わるため、オフィシャルな用途に使用することはできません。
このことは水素水や温泉水の科学的な性質や酸化還元電位の挙動を熟知している人であればイロハのイ、すなわち極めて基本的な話です。簡易溶存水素計のメーカーのでも、「単純な水素水以外では使えない」と明言しています。にもかかわらず、自ら「専門家である」と名乗りながらも、こうした理屈を一切知らず、また、説明しても理解することなく、温泉に水素があると声高に主張を続けている大学教授がいて、結構困った状況になりつつあります。
【簡易溶存水素計についてのまとめ】
1. 温泉水等の還元性の溶液の測定には使えない
2. pH7前後の純粋な水素水であれば個人の参考程度には使える
3. 純粋な水素水でも、酸性やアルカリ性の領域では使えない
4. よって、対外的に示す水素水の評価や商品販売の宣伝等には使うべきではない
この詳細については、日本温泉科学会「温泉科学」第64巻3号の「天然温泉における溶存水素(H2)」と題する論文で詳しく報告しています。論文の解説版については、こちらをご覧ください。
【2015年11月30日追記】
この件に端を発する俵山温泉の問題について未だ解決の兆しが見えず、官民総出で誤った情報の流布が続いているため、以下のページで問題提起しました。
「俵山温泉、山中温泉に高濃度の溶存水素は存在しない」
2015年1月末発行予定の日本温泉科学会の学会誌「温泉科学」第64巻3号にて、「天然温泉における溶存水素(H2)」と題する論文を発表します。
この論文の要旨は以下の3点です。
(1)2012年に山中温泉、2013年に俵山温泉で相次いで発表された高濃度の溶存水素は、不適切な測定方法による誤認であるという指摘
(2)上記誤認の主因となったと考えられる簡易溶存水素計の問題点
(3)現在のところ、天然状態の温泉水に溶存水素が確認できるのは白馬八方温泉(長野県)のみであること
この論文を発表することになった背景には、溶存水素およびその測定に対する認識不足に基づく誤認の広がりがあります。温泉水に溶存水素があるという情報は、10年ほど前から頻々と聞かれましたが、いずれも温泉水の測定には使えない測定方法による誤認情報ばかりでした。
今回の上記(1)についても、簡易溶存水素計の仕組みと温泉水の科学的性質を理解していないために起きた誤認ですが、マスコミやインターネットを通じて、こうした誤認情報が拡散しています。水素があると思い込んできたという観光客も実際に見られることから、根の深い問題になりつつあります。
当所では2012年に山中温泉で発表があって以来注視を続けてきましたが、2013年に俵山温泉でも同様の発表が続いたことから、以来、1年半にわたり慎重に調査を続けてきたものです。
詳細は、こちらの論文解説版をご参照ください。
【2015年11月30日追記】 俵山温泉の問題について解決の兆しが見えないため以下のページで問題提起しました。 「俵山温泉、山中温泉に高濃度の溶存水素は存在しない」
関連情報: 説明責任
温泉地というと、一般的なイメージでは草津や熱海といった、ホテルや旅館が多く建ち並び、土産物店が軒を並べる一つの”街”的な姿を思い浮かべますが、環境省の定義では「宿泊施設がある場所」となっているため、1軒宿も温泉地にカウントされます。2014年春に発表された2012年度データでは、日本の温泉地は3,085カ所です。ところが、この数値には毎年、疑問符が付きます。
その前年度である2011年度と比べると温泉地は-23となっています。もちろん、草津や熱海といった規模の温泉地が毎年消えたり、出現したりするわけがありませんから、その数の主体は1軒宿による温泉地です。ですから、温泉地の増減は、温泉宿泊施設の増減と密接な関連があります。そこでまず、県別の温泉地の増減をみてみると、もっとも大きな動きがあったのは熊本県の-27でした。ところが宿泊施設の増減を見てみると、温泉地数に影響を与える宿泊施設は-10しかありません。単純に考えれば、一軒宿の温泉宿泊施設が27軒廃業し、温泉地数に影響を与えない既存の温泉地に17の宿泊施設が新たにオープンしたことになりますが、全国的に温泉宿泊施設が減少の一途をたどっているなかで、他県の増減と比較しても明らかに大きな数字であり、違和感を感じます。
実は熊本県には前科があります。2009年度で80であった温泉地数は、2010年度には114と一気に34も増えています。そこで当時、環境省に「なぜ34も増えたのか」と理由を聞いたところ、「県による計上の仕方の違い」といった趣旨の回答がありました。そして2011年度には82となり、-32となりました。これについて再度、環境省に問い合わせましたが、返事がありませんでした。おそらく、前年度の誤計上を修正したためでしょう。そして今回は-27となるわけです。その真相は不明ですが、熊本県の変動数が飛びぬけて大きいため、全体の温泉地数にも大きな影響を与えているわけです。
データの発表は環境省ですが、実際にカウントしているのは各都道府県が行っているため、計上の仕方の違いやミスなどにより、温泉地数以外にもこうした齟齬はかなり含まれていると思われます。とくに「ゆう出量」や「延べ宿泊者数」などにはかなりの誤差が含まれていると考るのが妥当でしょう。
管轄保健所数や市町村数は間違えないとしても、日々変動する対象において正確な絶対数を把握することは不可能です。数値を読み解く際には、こうした背景にも思いを巡らせてみることも必要です。